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コロナ禍と診療報酬改定が財務に与える影響/病院経営の指標・読み方Vol.09

  • 業種 病院・診療所・歯科
  • 種別 レポート

2020年度決算で「増収になった医療法人数」は、約54%との特集記事があります。しかし、2022年度診療報酬改定の中身を見ると、実質的な当院の経常利益はどのくらいなのかを試算しておく必要がありそうです。

2020年度決算書で増収!

週刊東洋経済2022年2月19日号の特集「病院サバイバル」の記事によると、調査した2020年度決算書で「増収になった医療法人数」は、220法人中120法人で約54%を占める結果であったそうです。この調査は、その3期前の売上が全国上位300法人の決算届を都道府県に開示請求した結果、入手できた220法人の集計結果であり、売上規模は50億~3000億規模の幅があります。

増収の要因は様々ですが、2020年度というとコロナ禍真っただ中であるので、コロナ病床確保時の空床補償の補助金が大きいのではないかと考えられます。さらに独立行政法人福祉医療機構の調査によると、これらの補助金を受けた病院の2020年度の経常利益率は4.2%。2019年度の1.5%よりも2.7%も増加しているという結果も出ています。

仮に売上100億円規模の医療法人で2.7%の経常利益率が増加しているとなると、金額に換算して2億7千万円の増益となり、非常に大きな金額になります。

補助金がない場合は??

しかし、「空床補償補助金などコロナ対応の補助金が無かった場合は、マイナス1.7%になる結果が出ている」とのことです。マイナス1.7%とプラス4.2%の幅は5.9%にもなり、先ほどの売上100億円規模の医療法人で考えると、5億9千万円がコロナ対応に関する補助金ということになります。

これだけの財源を配分したからには、今後「回収」フェーズに入らざるを得ないことは容易に想像できます。その表れが2022年度診療報酬改定の中身に現れているのではないでしょうか。特に一般病棟入院料の重症度、医療・看護必要度のA項目見直しは、一般病床をもつ医療法人にとってはかなり影響があるでしょう。A項目の見直しの代わりに必要度を引き下げてはいますが、1%~4%程度の引き下げとなっており、セーフティネットの役割は全く果たしていないと思われます。なぜならA項目の見直しによって必要度はおそらく5%~7%は下がるからです。

コロナ禍の業界再編とは

今回の改定では報酬点数そのものは変えず、要件を厳格にすることで実質的に診療報酬を下げるという手法が採られている内容が多いように思います。だからこそ、実質的な当院の経常利益はどのくらいなのかを試算しておく必要があります。

具体的には、コロナに関する補助金や診療報酬上の加算を利益からマイナスし、感染対策で購入した衛生品費用(マスク、手袋等、消毒液等)を利益にプラスすることで、本当の利益を把握して頂くということです。

週刊東洋経済にも書かれていましたように、コロナ禍で重要な役割を果たした公立・公的病院436病院の再編統合も再スタートされるでしょう。力のある民間病院に譲渡することで過剰な病院数を集約し、ハード面(建替え等)、ソフト面(医療従事者の充実等)を充足させていくことが、医療を受ける患者にとって、有益な業界再編につながることを願います。

病院経営の健全化のために、いま必要な意思決定を議論します。

本稿の執筆者

藤原ますみ(ふじわら ますみ)
NKGRコンサルティング株式会社 取締役

クリニック・病院・社会福祉法人の財務会計に従事し、有料老人ホームの立ち上げにも参画する。現在は、病院の財務・管理会計の導入を通じた経営改善も担う財務のプロフェッショナル。公的機関主催の研修でも講師を多数務め、数字に苦手な受講者でも「今までで一番分かりやすかった」と、絶大な支持を得ている。

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本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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